HOME > 発酵食文化を訪ねて

冬は低温と降雪、その他の季節は寒暖ほどほどという気候条件に加え、
米や大豆が豊富にあった新潟県は、豊かに得られる清冽な水を使って
清酒、味噌、醤油、漬物といった伝統の発酵食文化が育ってきた。
最近では、新たに“発酵”の良さを活かした
個性的な食品も生み出されている。
新潟の風土と発酵食にはどんな関わりがあるのだろうか。
雪国・新潟の発酵食文化を訪ねてみよう。



県立新潟女子短期大学名誉教授
本間伸夫さん
農学博士。専門分野は食文化論で、“食は新潟にあり”など新潟の食に関する著書も多い。
新潟県で盛んにつくられてきた発酵食の清酒、味噌、醤油は、どれも麹(こうじ)を使って仕込んだものだ。麹づくりをはじめ発酵(醸造)は、清潔な環境のもとで初めてスムーズに進行する。特に清酒造りでは、雑菌の汚染にとても神経を使うので、低温と降雪によって空気や設備などが清浄化され、適度な湿気のある「冬」にじっくりと発酵を進ませる。一方、食塩の存在下で大豆タンパク質を分解熟成させる味噌と醤油造りには、適度な暖かさと長い熟成期間を必要とする。同じく発酵食である漬物は、高温ではすぐに酸っぱくなってしまい、温暖な地方はあまり適さない。漬物を得意とするのは、新潟を含めた東北などのやや寒い地域だ。本州の南北のほぼ真ん中にある北緯37.5度ラインが中越地方を通っていることからも分かるように、新潟は気候的に寒暖が極端に偏っていない。だからこそ、発酵に適した環境の中でさまざまな発酵食を作ることができるのだ。
もう一つ、発酵食づくりに大事なのは、原料が容易に手に入るかどうか。新潟では、雪に由来する豊かな水と夏の暖かさが育む米が酒や味噌に使われ、かつて「あぜ豆」と言って田の畔で栽培された大豆は、味噌や醤油に使われた。また、広大な新潟の海岸砂丘で栽培されるダイコンなどのさまざまな野菜は、味噌漬けやたくあん漬けなどの漬物に利用されてきた。原料が豊富であることも、新潟で発酵食づくりが盛んな理由の一つだろう。

新潟県内には、まだまだ特徴的な発酵食がある。主に、冬や正月のご馳走として各地に残る伝統食を探ってみよう。
魚や野菜と麹、ご飯を材料とした一種の漬物である伝統ずしでは、サケを使った村上地方の"いいずし"、阿賀野川流域の"アユのすし漬け"、身欠きニシンと大根を使う魚沼地方の"にしんだいこ"などがある。漬物では、主に中越地方の海岸よりで食べられる塩漬けした春イワシで秋ダイコンを漬ける"生ぐさこうこ"と、佐渡のフグ卵巣の酒粕漬けは、全国的にも極めて珍しいものといえる。
新潟の「寒からず、暑からず、雪が降る」という風土は、多様な食材を生み、発酵に適した条件を与えてくれる。そこに技術や心が加わることで、この地に豊かな発酵食文化が育まれてきたのだ。この発酵食文化は、雪国・新潟の暮らしの中に自然な営みとして根付き、現在に受け継がれている。

県内には96の酒蔵があり、新潟清酒の代表的な特徴はすっきりとした「淡麗辛口」。純米・吟醸・本醸造といった品質の高い酒づくりが高い評価を得ている。

新潟の味噌は米味噌。越後味噌として知られ、米麹の割合が高く甘みがある。佐渡味噌は越後味噌と比べて麹が少なく熟成期間が長いのが特徴。

西日本の薄口醤油に対し、東日本では色の濃い濃口醤油が優勢だが、新潟の醤油は比較的色が薄く、旨みが強いものが多い。

味噌漬けや粕漬けなどが豊富で、ゴボウやスイカなどの野菜のほか、鮭などさまざまな食材を漬ける。野菜類ではダイコンが多い。
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